「「今日はかっこいい悪役キャラについて話そうか。
商業漫画のキャラ人気投票では、悪役が主役を上回ることはない。その理由はわかるよね?
「うん。悪役はどれだけ主人公たちを惹き立てたか、が問われるからね。
「じゃあ、その惹き立て役の敵キャラに必要な要素は知ってる?
「え。えっと…… ものすごい悪人で、倒したときにすっきり爽快な奴、かな?
「確かにそれもある。でもさ、もっと具体的な要素があるよ。
「例えば?
「カリスマ性・信念・明確な目的。外見も大事だね。
「外見? それはどういう意味?
「いかにも悪者です、っていう外見じゃ駄目なんだ。見た目は平凡でも構わない。重要なのは内面だ。
本来の目的をひた隠し、かりそめの言動で主人公たちをかき回す。それが理想の悪役キャラ。
「ん…… 例えばどういうキャラなの?
「多重人格とかどうかな。状況に応じて別の人格が登場する。
外見の変貌はなくとも言動だけでそれを成立させられる悪役キャラが好き。
「なんだか難しそうだね。多重人格なら人格ごとの見た目を変えれば楽なんだけど。
「そこが腕の見せどころだよ。魅力ある敵キャラを描きたいなら」」
「ねぇねぇ。さっきから独りでぶつぶつ言ってるけど。大丈夫?
あたしたち初デートなんだからさ、もっとデリカシー持ってよね」