Neetel Inside 文芸新都
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【18禁】ちんちん小説集
ペニスギター

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 数年ぶりにギターを引っ張り出して弾いてみたがしっくりこない。指でピックを摘まんで弾くことに違和感を覚えた。似た感覚は他でも味わったことがあった。手書きで紙に文字を書く時に、嫌悪感とも呼べるほどの想いを味わったのだ。自分の字の汚さだけが原因ではないように思われた。脳の一部が変容したようだ。かつては当たり前のこととしてできていたことができなくなっていた。感じることができなくなっていた。

 だからちんちんでギターを弾くとしっくりきた。

 邪道と人は蔑むかもしれない。しかし人の数だけ個性があるように、何が正道で何が邪道かを他人が決めることはできない。その人にとっては一番自然な行為がその人にとっての正道である。誰が誰を好きになるか自由なように、何でギターを弾くかということに正解なんてない。

 ちんちんの硬さを調節することによって音色を変化させることができるのも魅力的だった。亀頭で弾くだけでなく、ちんちん全体を叩きつけるような弾き方もできた。弾くごとにちんちん奏法にのめり込んでいき、弦を押さえる指先の皮膚が硬くなっていくように、ちんちんの表面も鍛えられていき、ピックよりも硬くなるところも出てきた。

 ちんちんギターを極めた私は、ブルースの本場アメリカのコンテストへの出場権を手にした。日本国内ではちんちんギター奏法は公的な場での演奏を許されなかったためだ。オーディションでおもむろに下半身を剥き出しにする私は何度も銃口を向けられたが、演奏が始まると審査員たちは素直に評価してくれた。ちんちんはギターに感情を乗せることができた。喜怒哀楽を弦の響きに乗せるためにちんちんは暴れまわった。私に影響を受けてちんちんギタリストに転向する者まで現れた。

 だがいくら私がちんちん奏法を極めたといったところで、上には上がいる。優勝は叶わなかった。本場のブルースには勝てなかった。しかし私はコンテストのバックバンドの一員であったおっぱいドラマーの妻と出会い、アメリカでの永住権を得た。スタジオミュージシャンとしての職も得て、来年には子どもも生まれる。あの時ピックで弾くことに違和感を覚えなければ、得られなかった幸福だった。

 この手紙を、私の故郷日本で、日々の違和感に苦しむ人たちに捧げる。世間で行われていること全てに従わなければいけないわけではない。自分にとって自然で、一番実力を発揮できるやり方を、本能に耳を傾けて行ってほしい。君の本当の実力はそこで発揮される。さあ、まずは裸になろう。

       

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