Neetel Inside ニートノベル
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紅月の夜
第二期 半月 プロローグ

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どこかの高層ビルの最上階にある部屋。
少女はその部屋からガラス越しに街を見下ろしていた。
月明かりと張り合うように街のイルミネーションは輝いてる。
そんな綺麗な夜景を少女はつまらなさそうな顔をして見ていた。
しかし彼女はそれから目を離そうとはしなかった。
町を見ているのかガラスに映る掠れた自分を見ているのかはわからない。
ふと彼女の背後に何者かの影が現れる。

少女「なんですか?」
???「斉藤博士が呼んでいます。」

彼女は返事をせずに部屋を出てエレベータに乗り込む・・。
エレベータの開閉ボタンの下にある鍵穴に鍵を挿し込み回すと自動的に扉が閉まり下へと動き出す。
どれくらい下がったのだろうか回数はF30と書かれている。
扉が開き少女の前には薄暗く長い廊下が現れる。
少女は歩き出しその廊下の先へと足を進める。
廊下には少女の靴音だけが虚しく響き渡る。
あたりには薬品の匂いや機械から出たと思われるオイルの匂いが充満している。
しばらく歩くと廊下は突き当たりそこには鉄で出来た頑丈そうな扉が現れた。
その前で少女は立ち止まり口を開く。

少女「我、神の守護者。」
『音声認証を確認しました。ゲートを開放します。』

機械音声が返答をして鉄の扉がゆっくりと開かれる。
扉が開き終わると彼女は止めていた足を再び前に進める。
あたりはコンピュータや大型の機械がところ狭しと並んでいる。
中央あたりに一人の白衣を着た男が大掛かりな機材の前に置いてあるコンピュータの前に座っているのが見えた。
彼女はその男の前まで足を進めて止まる。

少女「お待たせしました。斉藤博士」
斉藤「やぁ待っていたよ。今丁度解析が終わったところだ。二三日中にはテスト運用ができそうだ。」
少女「それはよかったですね。」

少女は興味なさそうに言った。

斉藤「君が生まれ変わるのも時間の問題だね。」
少女「そうですね。」
斉藤「そして私が神になるのも実に時間の問題だ。ふふふふふふふふふ。はははははははははは。はああぁっはっはっはゲホゲホ!!」
少女「大丈夫ですか?」
斉藤「ゲホ!!ゲホ!!おえぇぇ!!・・・ふぅ~問題ない。実に問題ない。さて、そろそろ君の妹たちも起きる頃だ。計画を第二段階に進めようじゃないか。」
少女「私はなにを?」
斉藤「今は何もしなくていい・・。今はね・・。」
少女「そうですか・・。」
斉藤「POSシステムももうすぐ完成する。あぁすばらしい。実にすばらしい!!」

少女は斉藤を見つめていた。
ただ見つめるだけだ。そこになんの感情もないように・・。
机の上に置いてある携帯電話が振動し始める。

斉藤「お?どうやら呼び出しのようだ。・・・はい。」

斉藤は電話に出る。

斉藤「あぁ解析は終わった。」
・・・
斉藤「あとは実用化するだけだ。」
・・・
斉藤「あぁ問題ない。実に問題ない。」
・・・
斉藤「わかった。」

話終わると斉藤は無造作に携帯電話を放り投げた。

少女「それで斉藤博士。用件とはなんですか?」
斉藤「彼とはどうかね?」
少女「・・・すいません。変化なしです。」
斉藤「そうかい。君には期待している。実に期待している。」
少女「はい。」
斉藤「彼が協力してくれると研究がはかどるのだよ。うん、実にはかどる。」
少女「分かっています。」
斉藤「君が失敗した場合は彼を・・・」
少女「分かっています!!」

少女の声はこの部屋に響き渡った。
自分の声にハッした少女はすぐに斉藤に頭を下げる。

少女「すません。」
斉藤「気にすることはない。」

そう言って斉藤は少女の頭に手を乗せてる。

もうすぐ夏休みも終わるだろう。準備は速やかにしてもらいたいが任せていいだろうね。」
少女「はい。」
斉藤「そうかい。さて、私は夕食にでもするよ。君も来るかい?」
少女「いえ、私は部屋に戻ります。」
斉藤「そうかい。では、後で食事を運ばせよう。」

斉藤は横目で少女を見て部屋を出ていた。
少女はそんな斉藤の背中を見送った後に部屋を後にする。
もうすぐ自分は生まれ変われる。
部屋を出るとき少女の唇が少し歪む・・。
それが笑ったのかただそうしてみたのかはわからない。
それが意図的なのかそうでないのかはわからない。
廊下を来た方向に戻りエレベーターで再び最上階の部屋に戻ると少女は窓側の椅子に座ってガラス越しに夜景を見た。

少女「これで私も変われるんだ・・。生まれ変わって早くあの人に会いたい。」

少女は静かにそう呟いた。
・・・
・・


       

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